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「すいませんでした」
不可抗力ながらも男の立場は弱い事を知らされた
「気を付けて」
他にも言いたい事はあったのだろうが、俺が聞こえないばかりにその分かりやすい一言で安登家さんは済ませてくれた
早苗姉も何か言いたいようだったが、困り顔をするばかりだ。それは女として安登家さんにつきたい気持ち7割、甥として。仕方なくの部分が分かるからが3割といった所だろうか
そうして二人無事仲直りといった所で、早苗姉が最後の説明に入る
ここは考えて書いてくれたんだろう。別のノートに20ページは書かれている
勿論、安登家さんには口頭で同じ事が伝えられるのだろう
『実際、あなた達二人は自分1人で何とかやれると思ってるかも知れないけどそれは無理』
「「なんでですか!?」」
不思議と安登家さんと声が重なっていた
早苗姉が続きを読むように促されるまま続きを読んだ
『あなた達はどう足掻いても障害者です。それは変わりません。事実です。認めたくないでしょうけどそれが世の中です。』
『耳が聞こえなくて不便に感じなかった事はないでしょう?会話にも困る。電話も出来ない。救急車が近づいたら?他にも色々とあります』
それらの言葉は自分の胸を痛く締め付けるものだった
『だから、あなた達は1人では生きていけません。世の中はそんなハードル以上に越えなければならないハードルがあるのです。それはもう無理難題を言われる事もあります。あなた達はハードルが多すぎるのです』
『でもね』
そこでページを開く
『その越えるハードルがあるのは障害者でなくとも同じ、なのに私は1人で何でもできると東京に出て念願の教師になりました。でも、実際の教師はドラマや漫画とは違い、生徒1人1人相手してるより事務仕事や答案用紙の採点に疲れます。朝はテニス部の顧問をしていた頃は朝練込みで4時30分起き、帰りは12時越えてまでやってました。
その結果、過労からくる目眩で倒れました』
そこで早苗姉を見た。
察してはいるんだろうが、そこにあるのは少しばかり哀しみのある笑顔だった
『そんな事があった事もあり、私はテニス部顧問を辞め、学校を代わりました』
そういえば早苗姉は昔高校時代テニスの全国大会常連だったって聞いた事がある。それだけにテニスには思い入れもあっただろうに
『仕方ありません。自分の意志だけでできる事には限りがあります』
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