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「だから私を誘ったの?」
「ああ。僕みたいなヤブじゃ患者は呼べない。他の医者から患者を紹介してもらえるはずもない。でも気づいたんだよ。あの日、君のタトゥーを見て。タトゥースタジオにも、傷跡に苦しみ、困り果て、絶望している人が来るんじゃないかって……」
「傷跡に苦しむ人と接触する機会を増やすために?」
「そうだ。治療を行えるチャンスがあると思った……」
「それって、彼女さんのための敵討ち?」
「分からない……。でも、もううんざりなんだ。あんな出来事。そしてこの震えを止めるには、敵討ちでも何でもやって、呪いを解く以外ないんじゃないかって……」
瀬木の悲しそうな表情が今でも目に焼き付いている。私は自分の掌を見つめ、そして拳を握った。彼の手として呼ばれたのかもしれない。だが今はもう、この戦いは私のため、亜希のための戦いでもある。
ノックの音が鳴った。
「処置室の準備できたぞ」
瀬木の声がドア越しに響く。
「はい。もう終わるから」
私は亜希のお腹に塗ったインクを拭き取った。
「よし。こっちも終了。さぁ、行きましょう!」
準備は整った。
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