第三章 医師免許

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 男は謝罪をしながら、私に菓子折りを渡してきた。  勢いで受け取ってしまったが、いらなかった。 「こんなのいいから、帰って欲しいんだけど」  菓子折りを返そうとしたが、男は「まぁ、そう言わず……」と、受け入れない。 「……というか、何で私の居場所、知ってるわけ?」 「君のお姉さんが教えてくれてね」  あの女……。人の個人情報を何だと思っているんだ――。  私はため息をついて、こう聞いた。 「あんた、一体何なの?」  一見、真面目そうに見えるが、セクハラ男と思うと、見る目も厳しくなってくる。よくよく観察すると、スーツはよれているし、髪もボサボサだ。何とも怪しい。 「ああ、申し遅れました」  男はスーツの懐から、小汚い名刺を取り出し、差し出した。  私は皴のついた名刺をもらい受け、読み上げた。 「瀬木美容クリニック院長、瀬木壮太」 「僕、別に怪しいものじゃないんですよ」  男は軽薄そうに、頭を掻いて笑った。 「医学博士? あんたが?」  目を凝らして男の顔を見てみるが、とても、そうは見えない。 「……はい。じゃあ、分かりました。もう帰って欲しいんだけど」  私はこの男をスタジオの中に入れたくはなかった。ここで帰ってもらいたかった。 「ちょっとだけ、話しを聞いて欲しくて……」  瀬木はなぜかしつこく食い下がる。
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