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「話しなんかない、帰ってよ。警察呼ぶよ」
「いや、その、昨日は誤解があったみたいで」
「何が誤解なわけ? あんなにベタベタと」
「びっくりして触っちゃったんだよ。タトゥー」
私は右袖を少しまくり、タトゥーを見せた。
「これが何か?」
「その……。タトゥーに興味があってね」
「タトゥーを入れたいの?」
「違うよ。とんでもない」
瀬木は勢いよく、首を横に振った。
何しに来たんだ、コイツは――。
「じゃあ、帰ってよ」
「違うんだ。いい話しを持ってきたんだよ」
「いい話し?」
「僕のクリニックを手伝わないか?」
「はぁ?」
「免許持ってるんだろ、看護師の?」
「……。昨日の話し、聞いてたの?」
「あれだけ、大きな声で言い合ってれば、そりゃあね」
「看護師には戻らないからね」
それに私が持っている資格は准看護師であると、瀬木に伝えたが、意に介していない様子だった。
「今、君の仕事、ピンチだろ?」
瀬木は不敵な笑みを浮かべた。
「……どういう意味?」
「君の仕事というよりは、この業界自体かな」
瀬木はポケットから折りたたまれた一枚の紙を取り出し、私に手渡した。新聞記事のコピーだった。それには見覚えがあった。
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