第三章 医師免許

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 手にあった名刺を握り潰し、菓子折りと一緒に、近くのゴミ箱に投げ捨てた。その勢いに、さすがの瀬木も困惑した様子だった。 「結局、何が言いたい!?」 「も、申し訳ない……。実は提案なんだけど、僕の美容クリニックに、タトゥー科を設けるのはどうだろうかと。共同でクリニックをやらないかって話しで……」 「はぁ?」 「アートメイクは知ってる?」 「知ってるよ。馬鹿にしないで」  アートメイクとは、眉やアイラインに消えないメイクを施す美容技術である。原理はタトゥーと同じだが、アートメイクは皮膚が生え変わる箇所に色を入れる。そのため、何年かするとメイクは薄くなり消えていく。一生ものではないため、気軽に行える新しい美容法として人気を呼んでいた。  このメイクは元々、一般の技術者でも施術が可能だったが、医療事故の増加により、近年になって法整備された。その結果、医師か医師管轄の元で看護師資格を持つ人間しか、行うことができなくなっていた。 「タトゥーも摘発されたが、まだ細かい規則やルールはできていない。だが原理はアートメイクと同じだ。おそらく法的にもタトゥーはアートメイクと同じ扱いになると思う」
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