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「だから? 何だって言うわけ?」
「アートメイクは医療従事者が行えば問題ない。タトゥーの施術に関しても、准看護士が医師管轄の元、行う分には問題がないはずなんだ。だから、僕のクリニックで、君がタトゥーの仕事をする分には合法的に行えるわけで……」
「合法だから、何なの」
「摘発の心配はない」
「だからって……」
「お姉さんはどう思う? お母さんだって……」
「家族の話しは止めて」
「申し訳ない」
正直言って、瀬木の誘いは魅力的だった。しかし上手い話ほど裏がある。普通に考えて社会的地位の高い医師が、反社会的な彫師と手を組みたがるはずがないのだ。
そして何よりも第一印象が悪く、家族を餌に私を釣ろうとする態度も気に入らない。
「そもそもこの仕事を始めた時から、アンダーグラウンドな商売だというのは分かっていたから。失っていく人間関係があるということも分かってる」
「まだ間に合う!」
「もう帰ってよ!!」
瀬木はうつむいて、頭を掻いた。
「しつこいようだけど、名刺を郵便受けに入れておくから。もし気が変わったら……」
私は何も言わなかった。
瀬木は名残惜しそうに、ゆっくりとドアを開け、出ていった。
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