第四章 幼馴染

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 ソファに座り、待合室の中を見渡すと、見たこともないアニメのポスターやフィギュア、プラモデルがズラリと並んでいた。  今、店内に流れている曲も、よくは知らないが、九十年代後半のアニメソングということだけは分かる。  普段からお付き合いのあるこの店は、タトゥースタジオには珍しく、アニメや漫画のデザインを扱う専門スタジオだった。そのためBGMや内装も、マニア向けを意識していた。 待合室と施術室はパーテーションとカーテンで仕切られているだけなので、今、施術中のお客さんにもこの大音量のBGMは聞こえているのだろう。 「このBGM、お客さんにも聞こえていますよね?」  私はテーブルに置かれた作品集をパラパラとめくりながら、お店のオーナーにそう聞いた。 「ええ。嫌だって言うお客さんには、かけないですけどね」  パンクロッカーのような男性オーナーはそう言いつつ、私の前にお茶を出した。  私は軽く会釈すると、オーナーは微笑みながら、私の前のソファに腰を掛けた。 「音楽もこだわってますが、マシンもこだわっててね」 「マシン?」 「うちのマシンはドイツ製で、音も振動も少ないんです。だから静かでね」 「BGMを聞いて欲しくて?」 「そうです。BGMに集中できると、施術中の痛みとか恐怖とか和らぐんですよ」
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