13人が本棚に入れています
本棚に追加
ソファに座り、待合室の中を見渡すと、見たこともないアニメのポスターやフィギュア、プラモデルがズラリと並んでいた。
今、店内に流れている曲も、よくは知らないが、九十年代後半のアニメソングということだけは分かる。
普段からお付き合いのあるこの店は、タトゥースタジオには珍しく、アニメや漫画のデザインを扱う専門スタジオだった。そのためBGMや内装も、マニア向けを意識していた。
待合室と施術室はパーテーションとカーテンで仕切られているだけなので、今、施術中のお客さんにもこの大音量のBGMは聞こえているのだろう。
「このBGM、お客さんにも聞こえていますよね?」
私はテーブルに置かれた作品集をパラパラとめくりながら、お店のオーナーにそう聞いた。
「ええ。嫌だって言うお客さんには、かけないですけどね」
パンクロッカーのような男性オーナーはそう言いつつ、私の前にお茶を出した。
私は軽く会釈すると、オーナーは微笑みながら、私の前のソファに腰を掛けた。
「音楽もこだわってますが、マシンもこだわっててね」
「マシン?」
「うちのマシンはドイツ製で、音も振動も少ないんです。だから静かでね」
「BGMを聞いて欲しくて?」
「そうです。BGMに集中できると、施術中の痛みとか恐怖とか和らぐんですよ」
最初のコメントを投稿しよう!