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「あんた、こんな身体になっちゃってさ……。私も昔はグレてたけど、うちはあくまで普通の家庭なんだからね」
そんなことは分かっていた。
「だから、ずっと連絡取らなかったんでしょ」
「それはそれで心配するじゃない。要は、何で相談も無しにそんな仕事したのかってこと!」
「……ごめんなさい。でも母さんが大変な時くらい会いに……」
「逆に迷惑なんだよ。それが!」
私はグラスを飲み干し、うつむいた。
相談すれば、決意がぶれると思った。当然、反対されると思った。
家族とは離れ離れになるかもしれない――覚悟して就いた仕事だった。
しかし、いざ母親の体調を聞かされると……。
「お母さん、まだあんたが看護師してるって、思ってるよ」
「そうだろうね……」
「人を救う立派な仕事してると思ってる……」
「……姉ちゃん、彫師の仕事だって……」
そう言いかけた瞬間、私の右手を掴む手があった。いつの間にかあのセクハラ男が、私の席の隣まで詰め寄っていたようだった。
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