第一章 姉

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「あのさ、この後さ……」  男は私にささやいた。  あまりの気持ちの悪さに、私は絶叫した。 「姉ちゃん、この変態なんとかしてよ!」 「むしろ、あんたが帰ってくれないかな」 「セクハラ野郎の味方すんの?」 「そうだね」 「ひどすぎる! じゃあ、もう帰るよ!」  私は男性客を振り払い、階段へ走った。 「あ、飲み逃げ!」  下から姉の声が響いた。 「姉ちゃんなんだから、そこは奢っとけ!」  私は階段を駆け上がりながら答えた。 「真奈! 客のプロなんでしょ! 金払え!」  姉はそう叫んだ。  さっき自らが放った『公私混同はプロ失格』という言葉が頭をよぎり、『私は客のプロ』という言葉が自分の首を絞める。  だが、後には引けず、私は全速力で地上へと舞い戻ったのだった。
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