13人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのさ、この後さ……」
男は私にささやいた。
あまりの気持ちの悪さに、私は絶叫した。
「姉ちゃん、この変態なんとかしてよ!」
「むしろ、あんたが帰ってくれないかな」
「セクハラ野郎の味方すんの?」
「そうだね」
「ひどすぎる! じゃあ、もう帰るよ!」
私は男性客を振り払い、階段へ走った。
「あ、飲み逃げ!」
下から姉の声が響いた。
「姉ちゃんなんだから、そこは奢っとけ!」
私は階段を駆け上がりながら答えた。
「真奈! 客のプロなんでしょ! 金払え!」
姉はそう叫んだ。
さっき自らが放った『公私混同はプロ失格』という言葉が頭をよぎり、『私は客のプロ』という言葉が自分の首を絞める。
だが、後には引けず、私は全速力で地上へと舞い戻ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!