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「…なにこれ?」
べっとりとした、何かが指先についたらしい感触。
「茶色?」
「どうかした?」
「なんか手についてるの」
ほら、と見せてみるも、湊も首を傾げている。それを鼻へと近づけた時、正体はわかった。
「チョコだ」
「え?」
「…待って」
慌ててチケットを裏返す。
「ぎゃああああ!」
そして、絶叫した。
「おまっ、何!?」
「ちょ、チョコチョコチョコチョコ!ついてる!」
掲げるようにチョコ付きチケットを見せると、彼は顔を真っ青に染めた。さっきまでとは真逆の様子だ。
「…まじ?」
「まじ。大まじ」
「箱の中って、チョコ入ってたんだ…」
それから聞いた弁解はこう。
まず、湊は今日このチケットを私に渡そうと計画していた。しかし、ロマンチックを目指して準備していた最中に私が突然帰ってきてしまった。そして驚いた湊は、近くにあったチョコレートの箱にチケットを突っ込んだ。
そこまではまだ大丈夫なのだ。
しかし此奴は、それを隠すためにこたつの中へと箱を忍ばせた。普通にそこら辺に置いておくだけでバレないはずなのに、焦っていてそこまで気が回らなかったと言う。
そして、三分の一ほど溶けたチョコレートはチケットの裏に模様を描いたというわけ。
「は、早く拭こう!ティッシュ!」
「お、おう!」
二人揃って、ゴシゴシと、だけど丁寧にチョコレートを拭き取っていく。数分後、何とかましな姿になったチケットに、ほっと一息ついた。
「…よかったぁ」
「まじでごめん」
本気で落ち込んでいる湊に、思わず笑みが漏れる。
「これも思い出じゃない?来年の元日は何が貰えるのっかなー」
「なっ、こんなすごいプレゼントは今年限定だから期待すんなよ」
「えへっ、楽しみにしてるね。ダーリン」
「誰がダーリンだよ」
見つめ合い、ぷっと吹き出す。そして、どちらからともなく唇が触れ合った。
大好きだよ、湊。
こたつの中に揃って潜り込み、甘く温かいキスを交わした。
【完】
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