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「ねーえー」
「何」
PSVitaのゲームをしている手を全く止める気配のないこいつ、阿久津湊。
こたつから上半身だけを出し、うつ伏せになりながらも肘とクッションでちょうどいい体勢をつくり、器用に指を動かしている。
私はというと、入れたばかりのココアを手に、上からゲーム画面を盗み見ていた。
あ、なんか変な化け物がいる。そいつと戦っているようだ。大人気ゲームらしい。
しかし、彼の彼女である私からしてみれば、この状況は非常に面白くない。非常に非常に面白くない。
「あーくーつーくーん」
「キモい」
「ちょっ…!」
重力に引きずられそうになったカップを慌てて両手で持ち、キッと睨んでやる。
ゲーム画面割れたらいいのに…!
温かいこたつに入り、ドスドスと胴体か足あたりを蹴ってやる。
「痛い」
「私の心の方が痛いわ!」
やけくそのようにテレビをつける。
今日は元日。初詣には二人で行ってきたところだ。
帰ってきてすぐにゲームをし始めた湊だが、一緒に出かけてくれただけまだいい方なのだろうか。
なんて、無理にポジディブ思考に切り替える。
元日ぐらい、のんびり会話を楽しみたかった。隣同士に座って、ぼんやりと元旦スペシャルのバラエティ番組を見ながら。お菓子を食べたり、ゴロゴロしたり。
おせちを買ったり作ったりする余裕はないから、いつも通りの食事でいい。でも、せめてお餅は食べたいかも。お餅かぁ…、いいな。
思い立ったら即行動だ。
真っ白に膨らむ笑顔が頭から離れず、暖かい空間から立ち上がる。
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