―日常編―『崩壊と邂逅』

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教室から目を逸らす。窓の外には高い空、名も知らぬ鳥が千切れ雲を横切っていく。 虚しい。いっそ高校を中退して働くべきだろうか。いや、それを母が許すわけ無い。叶えたい夢や、やりたい事などあれば交渉の余地もあるがそれもないので言い訳も出来ない。 鳥がうらやましい。何も考えずに飛び回るだけでいいのだから。 そんなくだらない事を考えていた時である。視界の端で何かがキラリと輝く。 向かいの教室窓からだ。ウチの学校は英語の『E』のような作りになっている。3階は我々1年、2階を2年、1階に3年生の教室がある。新入生が上階などおかしいんじゃないかと最初は皆思う。しかし1ヶ月も通えば、そうでない事に気付くのだ。毎日階段で上がるのも面倒くさいし、1階にある食堂の人気メニューは早い者勝ちの争奪戦。距離というハンディを背負った1年は、目当ての学食にありつけない。 そんな食堂のある中央建物は他にも職員室、音楽室や保健室などで使われている。 向かいの教室は美術室のはず。あやふやな言い方なのは窓にカーテンがかけられており、中の様子を窺う事が出来ないからだ。 そのカーテンの隙間から、光が見えたのである。気のせいなどではない、あれは一体何だったのか。窓に顔を近づけ観察していると突然、後頭部に強い衝撃が走る。 思わず「痛ッ!」と声をあげ振り返ると、仁王立ちの見知った顔があった。
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