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八神火狩の唇が動く。何と言ったのか聞き取れず、俺は首を傾げる。すると彼女は背中を向け歩きだした。「火狩様!」という薙刀女の声に、耳も貸さない。
「ええい貴様! 今日の所は勘弁してやる! 有り難く思う事だな!」
悪役のような捨て台詞を残して生徒役員補佐を名乗る女は走り去っていく。周囲の野次馬共も騒ぎが終わった事で再び動き始める。なんなんだよ全く。
訳の分からない疲れを感じる中、スマホが震えた。嫌な予感がしつつ電源を入れると、思った通り月乃からメールだ。『今どこ?』という昼間と全く同じ文章。恐らく俺を部活へ引っ張っていこうと教室に訪れ、姿が見えないからメールを送ってきたのだろう。モタモタしていれば捕まる可能性は高い。
俺は慌てて靴箱へ向かい、逃げるように学校を後にした。
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