―日常編―『崩壊と邂逅』

10/24
前へ
/42ページ
次へ
電車に乗っておよそ10分、自宅近くの最寄駅で降りる。途中でコンビニに立ち寄り、炭酸飲料を飲みながら帰路につく。腕時計を見て、まだこんな時間なのかと感じる。 部活をやっていた頃は、1日が本当に早いと思っていたのに。何もやる事が無くなると、こうも時間を持て余すとは。 このまま帰っても退屈なだけ。内容が分かり切っている漫画を読み返し、親が仕事から戻ってくるまでゴロゴロとするしかない。 ふと遠くの景色を見て思い立つ。久しぶりに、あそこへ行ってみるか。 住宅街とオフィス街の境にある、テニスコート3面分程の運動公園。早朝は年配者、昼間は休憩時間を利用したサラリーマンやOLに人気の場所。しかし夕方からは人が減るので、俺も去年までよく利用していた。 バスケットゴール下に大学生くらいの男が3人いる。自前のボールを持ち込み楽しんでいるようだが正直、小学生時代の俺の方がうまい。 あの頃は、ここで知り合った同級生の少年に負けたくなくて、必死に腕を磨いたっけな。そいつは親の都合で引っ越したが、今もバスケを続けているんだろうか…… 感傷的な気分を払拭させようと、手にしていた炭酸飲料を一気に飲み干す。辺りを見渡すと、少し離れた場所にゴミかごが見えた。 俺はシュート体勢をとり、狙いを定めて空き缶を放る。一瞬、腕に『痛みが走ったような気』がした。空中で弧を描いた空き缶は、ゴミかご手前で着地。乾いた大きな音を鳴り響かせる。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加