―日常編―『崩壊と邂逅』

11/24
前へ
/42ページ
次へ
地面に転がった空き缶を改めて捨てようと身を屈めた際、突如視界が歪んだ。耳鳴りと立ちくらみが一気に訪れたような感覚。 やばい、立っていられなくなると感じた俺は俯き、足腰へ力を込める。地面と靴が暗転していき、完全に真っ暗となって……ようやく自分の足元が見え始めた。 今のが貧血というやつだろうか。初めて体験したので本当にそうなのか分からないが、ちょっとビビッてしまった。俺は一息ついて顔をあげる。すると―― いつの間にか運動公園が消えていた。道の真ん中、大勢の人達がこちらをチラチラ窺いながら横切っていく。なんだ? ここは一体どこだ? 混乱しながら周囲を見渡す。見慣れた場所だった。駅の近く、家まで帰る途中にある商店街通り。だが運動公園からここまで、徒歩10分くらいかかる。 10分間、俺は意識が無いままここへ歩いてきた? そんな事が有り得るのだろうか。 拾おうとしていた空き缶はない。けれど、しっかり自分のカバンは肩にかけたまま。 腕時計を確認する。PM18:15……運動公園に到着したのは何時だった? 分からない。でも駅に着いた時間なら覚えている。16:30を過ぎていた。 だったら大学生らしき3人組の下手なバスケを見ていたのが17時頃と推測。眩暈がしてから1時間くらい過ぎている? その間、俺は一体……どうやって、ここに……
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加