―日常編―『崩壊と邂逅』

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もしかしたら、どこか調子でも悪いのだろうか。自覚は無いが、可能性はあり得る。 とりあえず突っ立っていても意味がない、家へ帰ろう。この時間なら既に母も帰宅しているはずだから、相談してみよう。おかしな顔をされるとは思うが。 無理やり頭を切り替えさせて歩き出す。逆に話のネタが出来たと考えるべき。とはいえ悲しいかな、それを話す相手がいないけどな。 こんな時間ともなれば、人通りも車の往来も激しくなる。交通量の多い四車線の道路、横断歩道の信号機が青く光るのを待つ。 巨大な電光掲示板に、現在公開中の映画が宣伝されている。そういえば久しく観に行ってない。最後に行ったのは、いつだったか。ああ、確か中学校最後の大会が準決勝で敗れ、意気消沈していた俺を月乃と空哉が誘ってくれたやつだ。3人共観たい映画が違って、チケット売り場で言い合いになって。最終的には月乃が提案した恋愛コメディ? になったんだよな。若手人気俳優がメインの、つまんねぇ内容だったっけ。 思い出に浸っていると突然、ドスンと身体が揺れた。状況が把握出来ず、思わず「は?」と言葉が漏れる。2歩ほど踏鞴(たたら)を踏み、大きなクラクションが鳴る方を向く。 それは、巨大なトラックだった。
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