―日常編―『崩壊と邂逅』

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ピンポンと、来客を知らせるチャイムの音が聞こえた。俺は母親の怒りから逃げるように「俺が出る。靴も戻さないといけないからさ」と言って、そそくさと玄関に向かう。 靴を指定の場所へ放り、俺は玄関扉を開ける。「はい、どちら様――」とまで告げた後、そこに立っていた人物の姿を見て、慌てて扉を閉めようと試みた。けれど時すでに遅し。相手は扉が閉まる瞬間、すかさず足を入れてブロック。僅かに開いたスペースから腕を侵入させ、俺の手を掴む。腕力もさる事ながら、爪が刺さって超痛ェ! 「なに私の顔見て扉を閉めようとしてんのよ……!」 メキメキという骨の軋む音が聞こえてきそうだった。殺意の波動をまとった月乃に、再び俺は冷たい汗をかき始める。 「月乃、もうそれぐらいにしてあげなって」 別の声が聞こえた。改めて扉を開けると、月乃の隣に空哉が立っていた。いつもの朗らかな笑顔が、今はどこか困ったような表情にも見える。 ようやく月乃の魔手から逃れる事が出来た俺は、5本の爪痕が残された痛々しい自分の腕をさすってみせた。ちくしょう、野生児め…… 「何の用だよ」とこちらから用件を聞くと、再び月乃が「はぁ?!」とメンチをきってくる。助けてお巡りさん。 「今日も部活に来なかったみたいだからさ、心配になって様子を見に来たんだよ」 空哉の言葉に、俺はわざとらしく溜息をついてみせた。
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