―日常編―『崩壊と邂逅』

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八神火狩が歩くだけで、汚い廊下がランウェイに早変わりする。更に目を引いたのは、その後ろに立つ黒服姿の男。 デカイ。身長179cmと背の低い方ではない俺より、頭1つ飛び抜けている。190cmはあるだろう。頭は綺麗に剃られており、スーツを着ていても隠せない厚い胸板と太い腕。まるで動く金剛力士像だ。 そんな美女と野獣に恐怖した広哉は、無言で道を開ける。月乃に至っては現実に何が起こっているのか分からず、錯乱状態でオロオロするばかり。 八神火狩が俺の前に立つ。これも夢の続きなのだろうか。もしかすると放課後に失礼な事をしてしまったので、殺し屋を雇って報復に来たとか…… ビビッた所を見せれば一気にやられる。俺は逃げ出したい気持ちを堪え、矢島火狩を睨み続けた。 「………………………………」 八神火狩の顎が微かに上げる。すると後ろの大男が彼女に近寄ってきた。何やらコソコソと話し始める。 「失礼致します。貴方が水嶋涼平様でしょうか」 丁寧な口調で名前を呼ばれた。たどたどしく「……はぁ……そう、ですけど」と答える。 「こちらは水嶋様のカバンに御間違えありませんか?」 差し出されたのは、確かに俺のカバン。何故? どうしてこれを? 「道に落ちているのを、お嬢様が発見されました。失礼ながら中身を確認した所、水嶋様の生徒手帳が入っておりましたので」 生徒手帳には住所も記載されている。しかし、わざわざ届けにまで来てくれるとは。
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