―日常編―『崩壊と邂逅』

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「あ、ありがとな。助かった。ところで、このカバン何処に落ちていたんだ?」 「………………………………」 八神火狩に尋ねたが、またしても無言。代わりに大男が答えてくれた。 「商店街通りの道路脇で御座います」 商店街通り、となれば事故に遭った場所と合致する。だが俺の身に怪我はない。夢なのか現実なのか、本当にどっちなんだ。 思い悩んでいたら、いつの間にか横へ来ていた月乃に服の袖を引っ張られる。口元を隠すような素振りをするので、俺は片耳を近づけた。 「あんた、いつの間に孤高の嬢王と……もしかして何か思い出したとか?!」 「別に親しくなったつもりはない。話を聞いてなかったのか? 俺のカバンを届ける為にわざわざ来てくれただけの話だろ」 「その『わざわざ』の事を私は言ってるのよ! 昔から本当に――」 コホン、と八神火狩の咳払いが聞こえて、月乃は俺から慌てて離れる。無視された感じで腹を立てたのだろうか。 何となく重苦しい空気が流れてきた時、大男が「お嬢様、そろそろ」と告げた。彼女は静かに頷くと、歩き始める。 「あっ、ちょ、ちょっとすみません!」 階段を下りようとした時、今まで一言も喋らなかった広哉が声をあげる。2人の元へ行き、何やら話をしたり大男と握手をしたりしているが……一体何なのだろうか。
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