5人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「あ、ありがとな。助かった。ところで、このカバン何処に落ちていたんだ?」
「………………………………」
八神火狩に尋ねたが、またしても無言。代わりに大男が答えてくれた。
「商店街通りの道路脇で御座います」
商店街通り、となれば事故に遭った場所と合致する。だが俺の身に怪我はない。夢なのか現実なのか、本当にどっちなんだ。
思い悩んでいたら、いつの間にか横へ来ていた月乃に服の袖を引っ張られる。口元を隠すような素振りをするので、俺は片耳を近づけた。
「あんた、いつの間に孤高の嬢王と……もしかして何か思い出したとか?!」
「別に親しくなったつもりはない。話を聞いてなかったのか? 俺のカバンを届ける為にわざわざ来てくれただけの話だろ」
「その『わざわざ』の事を私は言ってるのよ! 昔から本当に――」
コホン、と八神火狩の咳払いが聞こえて、月乃は俺から慌てて離れる。無視された感じで腹を立てたのだろうか。
何となく重苦しい空気が流れてきた時、大男が「お嬢様、そろそろ」と告げた。彼女は静かに頷くと、歩き始める。
「あっ、ちょ、ちょっとすみません!」
階段を下りようとした時、今まで一言も喋らなかった広哉が声をあげる。2人の元へ行き、何やら話をしたり大男と握手をしたりしているが……一体何なのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!