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つい先程、広哉の言っていた言葉を思い出す。
『八神さんが言ってたよ――アプリを開けって』
これが、そのアプリと言うのだろうか。だとすれば、何故そんな事を知っているのか。
気味が悪くなり、受け取ったカバンの中身を確認してみる。どうやら俺の直感は冴えているらしい。見慣れない紙が1枚入っており、英数文字と数字が書かれていた。
頭を捻らなくても分かる。これはIDだ。恐らく、八神火狩の。
なんでこんな回りくどい事をするのか分からない。直接ID交換するのが恥ずかしかった? 謎の文章も、もしかしてアイツが……いや、そんなキャラじゃないだろ。なんといっても嬢王様だぞ。
……とはいえ、どうする? 言われた通りにアプリを開き、彼女のIDを登録するのか?
フッと鼻を鳴らす。普通ならば言う通りにしないだろう。けれど相手は、あの八神火狩。意図を探りたいのもあるが何より、試されてる感じが気にいらん。
いいだろう、あえて相手の土俵に乗ってやる。虎穴に入らざれば虎子を得ず。俺はポキポキと指を鳴らし、気合をこめて謎のアプリにタップ。その瞬間――
今までの平凡だった日常は、一変してしまったんだ。
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