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――PM 22:51 大阪梅田――
「ランキングに変動が起こってるで。とはいえ上位は相変わらずの不動やな」
後部座席の男はスマホを操作しながら呟く。くせっ毛の金髪にピアス、八重歯が特徴的の見るからにやんちゃそうな少年だ。
運転席に座る黒服の男がミラー越しに声主の様子を窺った瞬間、「あのさぁ」と声をかけられる。あまりのタイミング良さに、黒服の背中がビクリと跳ねた。
「さっき買ってきてもろた、このカフェラテやけど」
手にした飲み物を持ち上げ、黒服へ見せつけてくる。
「ミルクの部分とコーヒーの部分が、上下にハッキリ別れてるやん?」
確かに、2色の綺麗なコントラストを生み出していた。
「片方がリアルとすると、もう片方はバーチャルって事やねん」
黒服は何も答えない。言っている意味が分からないという理由もあったが。
「味が偏って、くっそマズい。全てが台無しや」
少年はおもむろに車窓を開けると、手にした飲み物を外へ放り投げた。
「せやから、混ぜなあかん。現実も、仮想も」
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