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言われた言葉を頭の中で反芻してみたが、やはりわからない。透子の呆れたような溜め息が聞こえた。
「つまりね、川島さんが亡くなったら奥さんが遺産を相続する。でも、奥さんが川島さんより先に既に亡くなっていたら、配偶者への相続はなし。死人に相続権はないの。
生さぬ仲の義理の息子が遺産を手にするためには、まず川島さんが亡くなって奥さんが相続して、その後奥さんが亡くなって母親の財産を息子が相続するっていうルートしかない。経由地である奥さんが先に亡くなってたら、川島さんの財産は義理の息子にはいかない。義理の息子が相続できるのは母親の財産だけなの」
「……えー! 知らなかった!」
早死にした親の代わりに孫が祖父母の財産を相続するという話もあるので、尋花はてっきり川島氏の相続人は義理とはいえ息子になると思っていた。
しかしこれで合点がいった。川島氏の財産がいかほどのものか知らないが、義理の息子にとって死亡日時が13日より前であることは経済的利益に直結する。
「常識でしょうよ」
「専門知識だよぉ。透子ちゃんよく知ってたね」
「私の実家も、相続関係ちょっと複雑だからね」
透子はポケットからハンカチを取り出して軽く額を拭った。彼女らしくないゆるキャラのワンポイント。透子の妹からのお土産の品だ。
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