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月の光が優しく降り注ぐ――
月明かりが綺麗な夜だった――
灯りの消えた部屋。窓から降り注ぐ、月明かりだけが支配する部屋で――
哀切なピアノの音が響く――
「亨……叔父様?」
幼い私が、部屋をおそるおそる覗くと、細身で背の高い男性がピアノを弾いていた。
男性がゆっくりと私の方を向き、優しく笑う。
「ああ、メグルか……」
私の名前を優しく呼んで、男性は手招きをする。
そうして、再びピアノに向かい、あの哀しい曲を奏でる――
「なんだか……哀しい曲だね……」
「ん?」
男性は曲を奏ながら、私に言った。
「ラ・カンパネラ……」
「え?」
「曲の名前」
「ら、かんぱねら……」
「そう。イタリア語で、鐘という意味」
哀切な曲が部屋に響く――
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