プロローグ~月の光と約束~

2/24
前へ
/601ページ
次へ
月の光が優しく降り注ぐ―― 月明かりが綺麗な夜だった―― 灯りの消えた部屋。窓から降り注ぐ、月明かりだけが支配する部屋で―― 哀切なピアノの音が響く―― 「亨……叔父様?」 幼い私が、部屋をおそるおそる覗くと、細身で背の高い男性がピアノを弾いていた。 男性がゆっくりと私の方を向き、優しく笑う。 「ああ、メグルか……」 私の名前を優しく呼んで、男性は手招きをする。 そうして、再びピアノに向かい、あの哀しい曲を奏でる―― 「なんだか……哀しい曲だね……」 「ん?」 男性は曲を奏ながら、私に言った。 「ラ・カンパネラ……」 「え?」 「曲の名前」 「ら、かんぱねら……」 「そう。イタリア語で、鐘という意味」 哀切な曲が部屋に響く――
/601ページ

最初のコメントを投稿しよう!

564人が本棚に入れています
本棚に追加