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3     ――我の妻となるにせよ拒むにせよ、一生誰にも洩らさぬと誓ってくれ。  聞かなければよかったのだ。  あの時、何も。  でも、逞しい腕に抱き寄せられて、耳元で囁かれて。  そんなアルトナルを拒むことなど。  あの時のわたしに、どうしてできただろう――   「思い合う相手がいる」  アルトナルはそう告げた。  わたしの息が止まった。  ああ、その時になぜ、心臓も止まってしまわなかったのだろう。 「どう…して、アルにいさま、なぜ、その方をお娶りにならないのですか」  震えながらも、わたしはかろうじてそう訊ねた。  「その者」とは、結ばれることはできないのだと、アルトナルは、ひどく落ち着いた口調で応じた。  「どうしても」と。  身分が違うということだろうか?  いいえ。たとえその相手が、奴婢(はしため)であったとしても、アルトナルが望めば、手に入れられないはずはない。  確かに、臣会の全会一致の議決を得るのは難しいかもしれない。  でも、アルトナルに心酔する大臣は多い。  その奴婢を養女にし、自らの娘としてアルトナルの妻へと差し出すことなど、歓んで引き受けるに違いないのに。     
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