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 小娘のわたしにすら、それくらいのことは、もう分かる。  今はもう亡いとはいえ、仮にもうちは王妃を輩出した家柄なのだ。  アルトナルは、最初からわたしにすべてを打ち明けるつもりだったのだろう。  わずかばかりの逡巡の後、落ち着いた低い声でこう続けた。 「相手は近衛隊の長。我の妻とすることはかなわない」  近衛の長……。  白斑流星の黒馬に跨る鎧武者。  その姿かたちは、わたしもすぐに思い浮かぶ。  貴族の娘たちのみならず、国の女たちのあこがれの的である、黒い髪に氷河の蒼の瞳をした美丈夫。 「だって、にいさま……」  ただ座って語らっているだけなのに。  わたしの息は上がり切ってしまい、苦しくて堪らなくなって、ゼイゼイと声がかすれる。 「アルにいさま、そんなの…だって……」 「そうだな。シグルドは男だ」  言ってアルトナルは、小さく笑んだ。 「だから、あれを娶るわけにはいかない」  わたしはもう声も出せず、ただ瞬いて息を飲み込み続けた。 「そして、あれ以外の者と肌を重ね合うことも、我にはできない」 「……アルにいさま」  なのに、アルトナルにいさまは、わたしを「娶りたい」と?  后にしたいとおっしゃるの?  分からない。  まったく、分からなかった。     
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