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4  まだ、なりませぬ。  今は。  そう告げられたとて、身体の疼きと痺れは止めようもない。  王城で初めて覚えた自慰の悦楽は、わたしにとって、まだ自由に操れるようなものではなかった。  だから、その場所を擦り上げる指先は止まらない。  薬師が、低く詫びの言葉を告げながら、わたしの手首をさらにきつく捻り上げ、陰部から指を引き離していった。 「いや、手を、はなして、はなし…て」  駄々をこねる幼子めいて、薬師から逃れ手淫を続けようと、わたしは身をよじる。  快楽の頂点は、もうすぐそこに、手の届くところにまで迫っていて。  刺激を止められるのは、切なくてせつなくて堪らなかった。  腿をきつくとじあわせ、わたしは腰を蠢かせる。  僅かでも、その場所の疼きを宥めたくて、ひとりでに身体が動いた。  それでも次第次第に、息遣いと鼓動とが静まっていく。  そして、わたしの耳は隣室の音を拾い始めた。  醒めゆくわたしとは反対に、隣の部屋の寝台の上では熱い吐息と悲鳴じみた嬌声とが、激しさを増していた。  打ち付け合う肌の音。  ひどく悲しげにも響くほど必死に、愛しいひとの名を呼ぶ夫の。  アルトナルの声が聞こえ始める。     
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