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 ああ、もうすぐなのだ……と。  その声音で、わたしには分ってしまう。  あの方は、今にも欲望を遂げるのだろうと――    それくらい幾度も。  わたしは扉越しに、この声を聴いていた。  遂に、壁の向こうで法悦がはじける。  獰猛な神獣が、もし主である神々に祈りを捧げるならば、こんな風に吼えるのかもしれないと。  そう思うような震える呻きで、アルトナルたちが達して果てた。  ほどなく扉が開いて、わたしの部屋にシグルドが姿を現す。  彼が手渡す器を受け取るのは、いつも薬師だ。  無言のまま、シグルドが出ていった。  そして扉は、ピタリと閉ざされる。いつも。  いつも―― 「さあ……ソウレイさま。もう宜しいのです、存分に気をお高めください」  薬師がやわらかく乾いた声で囁いた。    そして、閉じ合わさったわたしの膝は、ひんやりとした長い指に割られる。  足の付け根の襞が押し開かれた。  ごくかすかな違和感が、わたしの内側に押し入ってくる。  薬師が細い管を、わたしのほとへと差し入れているのだ。 「ソウレイさま、后よ。さあ、御身をお慰めください。どうぞ」  そうやって、消えかかった埋火を無理にでも掻き起こさせようとするかのように、薬師はわたしをせかして煽る。     
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