87人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
その人望には、国王すらも嫉妬するのではなかろうかと。
臣たちが、半ば本気に憂うほどに、アルトナルは非の打ち所のない後継者だった。
そんな従兄を、わたしは幼い頃から眩しく見上げていた。
夏の日には、日差しが形作る、彼の髪の上の虹色の王冠の眩しさに目を細め。
雪の日には、彼の優しい微笑みに、わたしの心はあたためられた。
大好きで大好きで。
ただ、アルトナルにいさまの姿が見える場所にいたくて。
それだけでいいと、そう思いながら。
わたしの気持ちは、年を経るごとに募った。
彼を思う心は膨らんで、愛しさが溢れ出して止まらなくて。
時折、垣間見ることのできるにいさまの姿に身体と心を疼かせ、切なさに眠れぬ夜を過ごすようになった頃。
父のもとに、国王からの使者がやってきた。
わたしを、長子アルトナルの妻として迎えると。
その王命が下された時、父と一族の皆は、狂喜に目を輝かせた。
わたしの一族は、国王ラクナルの妻の係累だ。
わたしが、次の国王たるアルトナルの妻となり、そして子を孕めば、一族の立場はさらに強固なものとなる。
けれど、そんな政のことよりもなによりも。
最初のコメントを投稿しよう!