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本当に、アルトナルさまのお選びになられた色が、大層お似合いでいらしゃる。
侍女も女官も、わたしを口々に誉めそやす。
「女」として、「美しい」と。
そう評されるには、まだ幼すぎることは、自分自身でも分かっていた。
子供のあどけなさを残した頬、大きすぎる目。
細い手足。
多分、胸も腰も、大人の女のやわらかさが十分であるとは言えない。
「やや子」ができれば、もっとお美しく、大人らしくおなりになられますよ。
ソウレイさまは、亡き王妃様にそっくりですからね。
そんな風に初老の侍女は、わたしに囁いた。
アルトナルの母であり、わたしの伯母であった王妃ヘルカは、まさに絶世の美女と謳われたひとだったから、老侍女の言葉は、最大級の賛辞と受け止めてもいいのだろう。
でも、その誉め言葉に、わたしの胸が真に浮き立つことはなかった。
「ソウレイ、お前は、まばゆいばかりに輝いている」
わたしの姿を一目見るやいなや、アルトナルがそう言った時に初めて。
わたしの心は、ふわりと舞い上がる。
「やはり、その色はお前のすべてに良く映えるな」
微笑んでアルトナルは、わたしの右手を握り、歩き出した。
でも、わたしのそんな浮かび上がるような多幸感は、
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