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今宵の宴ばかりは、妻や家族を連れての列席が認められていて、座はことのほかの賑わいを見せていた。
季節は夏至に向かっている。
陽はまだ高いままで、あたりはとても明るかった。
アルトナルが姿を現せば、彼を讃える声がさんざめくのは常のこと。
その王子に、しっかりと手を握られて歩くわたしを、アルトナルを崇拝する民たちが、無視することなどできはしない。
だから、アルトナルの耳に入るような声で、皆は言うのだ。
――お后さまは、なんと愛らしい。
――本当にお名のとおり、春の野の金鳳花のよう。
小さな白や黄色、一重や八重のソウレイは、誰もに愛され、いとおしがられる花。
けれどその花は、可愛らしくとも、豪奢でも華やかでもない。
こんなにも輝かしい、たぐいまれなる王子アルトナルの傍にいるには、ささやかすぎる。
「可愛い金鳳花さん」というのは、世の親たちが、自らの宝物である愛しい娘に呼び掛けるような言葉なのだ。
――王子の后となられるには、まだお若すぎるかと思わないでもありませんでしたが、どうしてどうして。なんとも似合いのめおとであらせられる、と。
ある臣が言う。
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