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臣会に主席する家臣は、老いも若きも関係なく、その能力と学識に応じた選り抜きの者だったが、やはり、それなりの歳の男たちが多かった。
そう、わたしの父さまと同じくらいの。
酒の盃を重ねるほどに、ごくあけすけなことを口にしたがるような歳。
「少しお顔を拝さぬ間に、ソウレイ様は、しっとりと落ち着かれたな」
酒の回った赤い頬で、父さまの知り合いの毛皮商人が言った。
「しかし、もう少しばかり腰回りに肉をつけねば。良い『やや』は産めませぬぞ」
「いやいや、后は、まだ年若くていらっしゃるのだから」と。
近くの誰かが、その商人の話をやんわりと引き留める。
けれども、その男もこう続けた。
「しかし、なかなかに艶っぽくなられたようで」
そう言って、笑んだふたりの男たちの口もとは、ひどく下世話で。
すでにひとの妻となった女であるにも関わらず、わたしの頬は熱くなった。
するとアルトナルが、わたしのもとへやってくる。
男たちは、ひれ伏さんばかりにこうべを垂れた。
真夜中になって、やっと傾いてきた日差しの中。
わたしは、アルトナルとやわらかい緑の庭に出る。
「どうだ、ソウレイ、疲れてはいないか?」
蜂蜜酒で満たされた角盃を手に、アルトナルが、わたしにやさしく訊ねてくれた。
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