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7  アルトナルの首筋に縋りついて、わたしは固く目を閉じた。  瞼の裏に光と影がチラチラと交互して、わたしたちが建物の中に入り、回廊を進んでいることが分かる。  そして、部屋についた。  薄く目を開けると、そこはわたしの寝室だった。  そっとそっと、アルトナルがわたしを寝台の上へと下ろし、覆いかぶさるようにして瞳を覗き込んだ。 「……して、どうして」  くちびるから、ひとりでに呟きが洩れる。 「どうして、にいさま、わたしを……后に」  なぜ、わたしなのですか……アルにいさま?  そんな切なる問いかけに、気高き王子は、雄々しく美しいくちびるを微かに緩める。 「我とお前は、幼き頃からずっと『仲良し』であったろう? レイ」 「にいさま」 「可愛いお前、『にいさま、にいさま』と、そう言いながら、いつも我の後をついて来た。忘れたのか? 『大きくなったら、アルにいさまのお嫁にしてくださいませ』と。ソウレイ、お前がそう言ったのだぞ」  覚えている。  忘れたりしない。  ああ、でも本当に「そうだから」なの?   だったら、どうして、どうして……。    わたしは両腕を伸ばして、アルトナルの肩に抱きついた。     
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