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つられる様に、わたしは頭まですっぽりと被っていた上掛けを引き下ろしていく。
「心地よい香りでございましょう? ソウレイ様」
薬師の声まで、どこか甘い。
さあ、息をゆっくりお吐きくださいませ――
衣の帯を緩めて。
今夜は暖かな夏の宵。
肌をくつろがせても、すこしも寒くはありませぬゆえ。
バチと、香ばしく木がはぜる音がする。
いつの間にか、暖炉にも弱いとろ火が入っていた。
遠くで、何かが鈍く軋む。
「……アルトナル様は、もう『始めて』おいでのご様子。さあ、ソウレイ様も早く追いつかなくては」
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