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身体の内に、あの液のぬるい感覚を覚えながら、わたしは絶頂の余韻にたゆたう。
けれど薬師は、管を、そして、あの棒も、わたしから抜き取ることもせぬまま、寝台の傍らに佇んでいた。
……この厭なものたちを、はやく、とりだして。
どこかへやって。
わたしはうわ言めいて口にする。
かすかな声だったけれど、夜の空気を震わせて、それは確かに耳に届いているはずなのに、薬師はわたしの願いをきかなかった。
その代わりのようにして、暖炉に薪を、香炉に香を足す。
「さて、今宵は……どうやら、もうひとたび」
独り言の声音で、薬師が口ずさんだ。
その言葉のとおりに、扉の向こうからは、また、あの軋みが。
荒い息遣いが、そして。
アルトナルが、はっきりと騎士の名を呼んだ。
きつく、わたしは両手で耳をふさぐ。
扉が開いて、また、あの男が姿を現した。
「ソウレイ様、ようございました、ほら……今日は二度も」
この上ない恩賜の品をことほぐように、薬師が、また「あれ」の用意を整え始める。
「さあ、后よ、もう一度」
その声に抗う気力など、わたしには、もはやなかった。
薬師は、わたしのほとの内を探って抉る。
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