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皆が……。
そして他ならぬアルトナルが、わたしに望んでいること。
それは一向に果たされない。
実を結ばない。
夜の閨でわたしに悪夢を見せ続ける、淫魔のようなあの薬師。
昼の間は、一体どこで何をしているのか、その姿をあらわすことはほとんどなかった。
でも、ある日わたしは、人目をはばかるようにして物陰で、アルトナルが、あの男を問いただす声を聴いた。
それは、アルトナルにしては、めったにないような厳しい口調だった。
なぜ、まだ后は孕まないのか。
「上手くいく方法を考える」、「必ずや、王子に世継ぎを」、そう言ったのは、他ならぬお前ぞ――
そんな風にきつく詰問され続けたのち、薬師が「畏れながら王子よ……」と、静かに口を開いた。
男女の交接を持たずに、子を成した者たちも皆無ではない。
方法がないわけではない。
たしかに、思い悩まれていた王子へ「その方法」をお示ししたは、わたくしでございました。
なれど、それはまずもって「通常の交わり」ではない以上、后が子を成すのは、常よりもよほど難しくなろうと。
そのことも、あわせて王子にはご説明申し上げたはず。
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