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幼い頃、わたしに馬の乗り方を教えてくれたのはアルトナルだった。
「筋が良い」と、熱心に手ほどきをしてくれた。
まるで、自らの身体の一部のようにして気に入りの駿馬を駆るアルトナルに追いついていくのは、はじめのうち少し大変だったけれど、わたしもすぐに勘を取り戻して速度を上げていく。
ふと馬上のアルトナルが、眩しい光を背に、わたしを振り返った。
「可愛いソウレイ、お前は、このところずっと元気がない様子に見えた」
そして馬の足を緩め、わたしが追いつくのを待ち、こう続ける。
「なかなかお前の顔を見に行けず、ともに過ごす時も減っていたからな。寂しい思いをさせた」
アルにいさま……。
かすれるように震えるように、アルトナルを呼んだきり、わたしは何も言えなくなってしまう。
アルトナルの指先が、わたしの髪へと伸ばされた。
「我はお前にひどくつらいことを強いている……それは知っている、分っているのだ、レイ」
「わたし…わたしは」
喉につかえて、上手く音にならない言葉を、わたしは懸命に絞り出す。
「ごめんなさ…い、にいさま、わたし、はやくアルにいさまの赤ちゃんを……」
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