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「レイ、お前は本当に良く務めてくれている」  やさしいねぎらいの言葉に、わたしの心の澱は粉雪が溶けるようにして、すこしだけ軽くなった。  でも、胸の内のもどかしさが、切なさが、そして悲しみが、すべて消え去ったわけではなくて。  わたしは、髪を撫でて梳るアルトナルの指先を握り締めてくちびるへと運ぶ。 「どうしても、どうしても、わたしと…共に閨にいてくださることはできないのですか。アルにいさま、わたしのことが嫌い? そんなにお厭なの? にいさまどうか、どうか、赤ちゃんを授かるまででいいの……わたし、アルにいさまが、あの方と思い合っていらっしゃること、邪魔をしたりはしません。これまでだってしなかったわ、だから……尊き王子アルトナルよ、わたしを哀れと思し召しなら、どうぞ御慈悲を」 「やめよ、ソウレイ」    アルトナルが苦しげに吐き捨てた。 「『哀れ』などと、そのような。王子アルトナルの妻、ゆくゆくは王妃となる立場の者が『哀れ』などと。そんなことがあるはずもない」 「にい、さま……」 「お前を嫌いなわけがないであろう、愛しいソウレイ。『お前を后に』と、そう希ったのは、ほかならぬ我自身だというのに」  だったら、なぜ……。     
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