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身体が、地面に叩きつけられる。
でも、その衝撃は予期していたより鈍かった。
誰かがわたしの腕を掴んでいる。
黒い馬の脚が見えた。
近衛の制服。
シグルド……?
「后よ、どうかお気を確かに」
黒い騎士が鋭い声で、わたしに呼び掛けた。氷河のように蒼い瞳が、わたしを見つめている。
ついてきていただなんて。
このひとが。
そうだわ。いつだって、このひとはアルトナルの傍にいるの。
傾く冬の陽ざしに長く伸びる影みたいに、遠く、近く……。
――ソウレイ!
アルトナルの声と蹄の音が近づいてきた。
「どうしたのだ、しっかりしろ」
そして、近衛の騎士に鋭く問いかける。
「何があった、シグルド。后はいかがしたのだ」
「畏れながら王子……ソウレイ様におかれましては、ふと馬上でふらつかれ、馬が跳ねた拍子に鞍から」
「なんと……」
そう口にして、少し絶句してからアルトナルは、わたしの頬に触れる。
「ソウレイ、どこか痛むのか? 返事をしないか」
「へい…き」
わたしは瞬いて、アルトナルを見上げる。
視界は、ぼんやりとかすんで揺れていた。
「どこも、いたくはない…の」
目の前が、すうっと明るさを失っていく。
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