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「子を産み落とすまでは、もう馬になど、決して乗せまい」と、そう口にして寝所から出て行った。  その背に、影のように近衛の長を連れて――  締まる扉の音を聴きながら、薬師がひとつ溜息をつく。 「まあ……『馬がどうの』という話ではね。一番にはご心労でございましょうから」  続けて、寝台の天蓋の内へと視線を転じ、 「もう、お目覚めでいらっしゃるのでしょう、ソウレイ様」と、静かに問いかけた。  ソウレイが、ためらうように、ゆっくりと瞼を開く。  すると、その淡い青の瞳を捕えて、薬師は、   「ただいま、滋と気血を補う薬を誂えますゆえ、少しお待ちを」と告げ、誉れ高き王子アルトナルの后へ、恭しく目礼を捧げた。
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