14

3/4
前へ
/98ページ
次へ
「……まあ、よい。あれも『やや』さえ産まれれば幸福になろう。子さえ孕んでくれれば」 「王子よ」  シグルドの声が、わずかにこわばった。  だがアルトナルは、それに気づいてか気づかずかこう続ける。 「女というものは、赤子に夢中になるもの。そうであろう、シグルド? 母は幼子をその腕に抱けば、他のことなど何もかも、どうでも良くなるものだ。良人のこととて、それは同じ」  アルトナルの言葉にシグルドは、その厚く凛々しいくちびるから、ただ深い吐息を洩れ出でさせた。 「王子よ、お解りでないのですか? 貴方は今、本当に惨いことをおおせだ。后は……ソウレイ様は、貴方のことをあれほどまでに希っていらっしゃるというのに」 「やはり……お前は我を責めておるではないか! シグルド」    アルトナルが、感情を露わにして声を荒らげた。  だがそれも一瞬のことで、すぐさま常の沈着な冷静さを身にまとって続ける。 「シグルド、忘れたか? 『これ』は……『こうなった』のは、『お前のせい』だろうが。そして、我をお前なしで居られぬようにしたは、他ならぬお前ではなかったのか」  アルトナル様……と、シグルドは息を飲む。  そして、     
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加