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 常どおりごく淡々と無感情でいながらも、どこか人を喰ったような響きをまとって、薬師が言った。 「淫戯の味をお忘れになられているご様子でしたので、お体の方を、少々解させていただいておりました」  なにを言っているの? この男は……。  眠っているわたしに、一体、何をして。 「こんな…こんなことをして、そなた、よいと思っているのですか」  わたしは精一杯の声で薬師をなじる。 「后がご懐妊召されるよう、『あらゆる手立てを尽くせ』と、それが王子アルトナルよりの直々の命にございます。アルトナル様におかれましては、『何をおいても、その責務を優先するように』と仰せで」 「だか……らって、こんな、こんなの」 「ですからソウレイ様。また心地よくなっていただくには、子種を深く受け入れていただくには、どのようにするのが良いか。お体に色々と試させていただいておりました……ああ、眠りながらも、ソウレイ様は幾度か、達しそうになられておいでで。おそらくは、もう少しで、以前の悦びを思い出されることでしょう」 「なんて、ことをいうの……」  薬師が口にする理屈のあまりの身勝手さに、わたしは憤怒で声を詰まらせる。  けれども、そうやってわたしに責められながらも、その間、薬師は猥褻な手技を止めることはなかった。     
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