15

6/6
前へ
/98ページ
次へ
 けれどあの男は、自らの手指で直接、ほとの内やわたしの肌に触れることはなかった。  だからこそ。  「これはアルにいさまの子を成すための、后の『務め』なのだ」と。  薬師も、彼の務めを果たしているだけだと、懸命にそう思うようにしてきたのだ。  でも、もう……。  こんな人形のような扱いなど、とても耐えられはしない。もう無理だ。  でも、どこにも逃げられない。  わたしに行くところはない。  だったら――  だったら。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加