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 だがシグルドは、ついにわたしの両手首を引き掴む。  そして荷物を担ぎ上げるように、わたしを肩に乗せると、塔の石段を降り始めた。  * 「塔の周りを見回っていたところ、階段を昇って行かれるお姿に気づき……」  ひと払いがされた居室で、騎士シグルドは、アルトナルに事情を語る。  隣の寝室では、薬師がソウレイの様子を診ていた。 「なぜ…そんな場所に、レイは何をする気で」  椅子の肘掛けに腕をつき、深くうなだれると、アルトナルは両手で頭を抱え込む。  シグルドは、王子の問いかけには何も答えはしなかった。  無論アルトナルとて、その沈黙の意味するところを察し取ることができないような人間ではない。  続き部屋の間の扉が開く。  長い衣の裾を翻し、薬師が姿をあらわした。 「今しがた、ソウレイ様が目を覚まされて……王子を、アルトナル様のお名を呼んでおいでです」  ゆらりと、アルトナルが立ち上がる。  そして、すこしも邪魔とはならない位置に佇む薬師を、ことさらに押しのけるようにして隣室へと入っていった。  *  アルにいさま……。  頼りなげな愛らしい声が、寝台の天蓋をちいさく震わせた。 「ソウレイ、我はここぞ、お前の傍にいる」     
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