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シグルドが腕を伸ばす。
その指の先には、「あの器」があった。
シグルドは脈打つように隆起する部分を器の内に押し当てると、激しく白濁を放つ。
……うそ。
嘘よ、ウソ。
こんなことは、みんな嘘だわ――
自らの胎内に受け入れ続けてきたもの。
それが「何」であったのか。
つきつけられたのは、その「真実」。
吐き気がこみ上げて。
よろめいた拍子に、わたしはランターンの台を押し倒した。
耳障りな音ともに明かりが掻き消える。
天蓋の内の男ふたりが、異変に身構えた。
「だれ……だ、まさか」
鋭さに戸惑いを孕ませた声で、アルトナルが叫ぶ。
わたしは、ふらつく足どりで後ずさると、転がるようにその場を飛び出した。
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