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「良い。もう探すな。『病で臥しておる者』を探し回るわけにもいかぬであろうが」  そう悩ましげに洩らす王子に、慰めにもならぬとは知りつつも、吾は、 「おそらくは、骸を見つけるのも叶わぬことでしょう……この様子では」と。  ソウレイ様の寝着の切れ端に目をやり、そう言い添えた。  *  ――無益な争いまでは好まぬ。  勇猛果敢であっても、血に飢えた戦士ではない。    そう誉めそやされる王子アルトナル。  だが。  己の若さと強さを過信して、将自ら、戦の先陣を切って馬を進めるような。  初陣の勝利に少なからず酔いしれ、好戦的であった頃もないわけではなかった――  そしてその背はいつも、歴戦の強者である騎士シグルドに護られていた。  その日の闘いは、混乱を極めていた。  国ざかいの川に面した地。  そこには古くから、いずこの国にもまつろおうとはしない部族があった。  今でも、折にふれては、武器を手に面倒な騒ぎを起こす。  わが邦とて威厳と威光を示さぬまま、それを放置するわけにはいかない。  そして、それはまさに若き王子にふさわしい出陣だった。  王子アルトナルが、馬上で敵と切り結ぶ。  川縁の民らしい、荒々しく筋骨逞しい戦士が、その相手だった。  重いひと太刀に、王子が体勢を崩した。     
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