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 敵の刃が滑り、王子の腰へと刺さる。  その傷自体は浅手ではあったが、王子はそのまま鞍から落ちた。  シグルドが、すぐさま王子の元へと駆けつけ、敵をなぎ払う。  だが、間に合わなかった――  落馬のはずみで刃の上へと、王子の身体が叩きつけられていた。  その時分の吾は城医ではなく、いくさ場の薬師であった。  アルトナル様の傷を診て、手当てを施したのは吾だった。  おびただしく流れ出る血を止めるために、王子の陰茎を根元から縛った。  傷は深すぎて、残せる部分はほとんどなく、子種を蓄える部分も、同じくほぼ潰えていた。    「この傷」については、誰にも洩らすなと。  王子は、吾とシグルドとに厳命を下した。  王子アルトナルは、民からの厚い信頼を損なうわけにはいかなかった――  現王よりも、民に頼られ愛される。  そんな自らこそが、今では国を支えていることを、王子は、既にはっきりと自覚していた。  若き男の身体であれば、傷も直に癒える。  王子は常の壮健さを取り戻し、周囲の誰もが、戦での負傷は「ごく些細な、とるに足らぬものだったのだ」と安堵していた。  だが、失った身体の機能が戻ることはない。  ただただつらいのは。     
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