19

5/6

87人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
 燃えるように身体を苛む男の猛りに他ならなかったはずだ。  行き場のない若い欲求を持て余す苦痛がどれほどのものか、真に想像もつかない。    だがそれでも、王子はひたすらに耐え忍んでいた。  だから吾は。  見るに見かね、耐えかねて。  快楽の「はけ口」をお示しした――  「後ろの場所での愉悦」の存在を伝え、そのための道具も用意した。  そう……。  「道具」に頼るしかないであろうと。そう思った。  もはや父王にすら、打ち明けることは叶わぬと、そう思い定めた「欠損」を抱えた身体であれば。  「他者」と肉の交わりなどというものを、持てるわけもない。  しかし、誇り高き王子は、吾の提案を決然と拒絶した。  「雌犬の快楽」に身を落とすことなど、とても耐えられはしないと――  しかし、ついに。  王子は、その身を投げ出したのだ。  この世で最も信頼を置く男、騎士シグルドの前に。  そして、後は堕ちていくだけだった。  「男」の悦楽においては、ただ欲望を「放つ」ことでしか行き着けない場所がある。  だがもはや、王子アルトナルには、それが叶わない。  身体の内に湧き起こり続ける欲求。  けれどもそれが解放されることは、遂になく。     
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加