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燃えるように身体を苛む男の猛りに他ならなかったはずだ。
行き場のない若い欲求を持て余す苦痛がどれほどのものか、真に想像もつかない。
だがそれでも、王子はひたすらに耐え忍んでいた。
だから吾は。
見るに見かね、耐えかねて。
快楽の「はけ口」をお示しした――
「後ろの場所での愉悦」の存在を伝え、そのための道具も用意した。
そう……。
「道具」に頼るしかないであろうと。そう思った。
もはや父王にすら、打ち明けることは叶わぬと、そう思い定めた「欠損」を抱えた身体であれば。
「他者」と肉の交わりなどというものを、持てるわけもない。
しかし、誇り高き王子は、吾の提案を決然と拒絶した。
「雌犬の快楽」に身を落とすことなど、とても耐えられはしないと――
しかし、ついに。
王子は、その身を投げ出したのだ。
この世で最も信頼を置く男、騎士シグルドの前に。
そして、後は堕ちていくだけだった。
「男」の悦楽においては、ただ欲望を「放つ」ことでしか行き着けない場所がある。
だがもはや、王子アルトナルには、それが叶わない。
身体の内に湧き起こり続ける欲求。
けれどもそれが解放されることは、遂になく。
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