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王子は、その場しのぎにすぎぬ「男との交接」を、それでももう止めることができなくなっていた。
夜ごと、幾度も。
己を貫き揺さぶる雄の精を絞りつくしてもなお。
時に気を失うまでに、「それ」を欲した。
近衛の長が、「その役目」を受けたのは、王子の背を護り切れなかったことに対する責めを負う気持ちからだったのか。
それとも……。
互いに初めから、特別に惹かれ合うものが存在していたのか。
いずれにせよ、ふたりはすでに深みに填まり切っている。
相手なしでは居られぬ情欲の淵に、ただ堕ちて――
むしろ、それもまた「愛」と呼びうるものなのか?
否、分からない。
だがおそらく。
どんな言葉でもあらわし尽くすことはできない何かは、確かに存在するのだろう。
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