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「……にいさま、うれしい。ありがとうございます」
そう言って、自らの前に佇む男へ触れようと、娘はたどたどしい様子で、はかない指先伸ばす。
それをそっと捕らえ、男は自身のくちびるへ鼻先へ、そして睫毛へと導いた。
そしてふたたび、娘の指をくちもとへと引き戻すと、ゆっくり口に含む。
くちびるで啄み舌を絡め、男は娘の指を一本ずつ舐め尽くした。
娘の吐息が、荒く甘く乱れていく。
ちゅくり、ちゅくりと。
ひどく猥褻な水音を立てて、男は指をしゃぶり続けていた。
それはあたかも、男のくちびるが女陰であり、娘の白く華奢な指が男陽であるかのような愛撫だった。
男は、もう片方の娘の手首を掴んで、それを別の場所へと導く。
「そら、我の『剣』はここだ」
娘の指先に触れたのは、滾る塊。
その熱にためらって弾ける指先を、男は、さらに強く押し当てさせた。
娘のくちびるが、何かの言葉を紡ぎかける。
けれども、それを音にせぬまま、娘はただ息を飲んだ。
「今……何を言おうとしたのだ、我が后よ」
「にい、さま…」
「何を言おうとしたのだ、レイ?」
詰問を緩めぬ男に対し、娘はくちびるを噛み締めたまま、ただ、ふるふると首を横に振る。
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