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ぼそりと呟く声を聞きとると、タダシの方を振り返り、身体をびくんと震わせて後ずさり。
「ニンゲン、ヤメロ。ヤメロ。コーゲキヤメロ。コノウソツキ、ヒトデナシ」
見覚えのある姿。聞き覚えのある表情のない甲高い声。たどたどしい言葉。間違いなく、そいつはコロギヌス星人だった。地球を侵略しに来た宇宙人。
なぜかひどくおびえている。人間自体を恐れているかのような口ぶりだ。
よく見ると、そいつはケガをしていた。黄緑色にぼやぁっと光る皮ふに青い血を流す傷が開いていた。
「ケガをしてるじゃないか。大丈夫?」
「ウルサイ、チカヅクナ」
せいいっぱいに優しい声をかけてみるも、そいつは細長い腕をぶんぶんと振って、「あっち行け」とタダシを追い払う。
どうして、こうもおびえているのだろう。――それに、こんな臆病な宇宙人が、本当に地球を侵略しに来たのか。
そんなことを考えていると、パトカーのサイレン音が鳴り響いた。
「マズイ、ニンゲンくるっ」
タダシは、とっさにそいつの身体を抱きかかえた。その小さな身体は、タダシがすっぽりと覆い隠せるほどしかなかった。
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